新松戸教室の濱中です。
夜の時間帯へ移行した3月の授業。
国語では「小説を読もうシリーズ」第2弾として、志賀直哉の短編『小僧の神様』を読み始めました。
この小説の魅力は、なんといってもその「美しさ」だと思います。
少し中身を紹介しましょう。
主人公の仙吉くんは商店見習い(小僧)で、先輩たちの話す「寿司の屋台」に憧れる少年です。
意を決して屋台へ行くものの、彼の手持ちでは一貫すら注文することはできません(舞台となるのは大正時代、今と比べても格差の大きな時代)でした。
仕方がなくとぼとぼと帰る仙吉くん。
ちょうどそのとき、屋台には国会議員のA氏が居合わせていました。
実はこの2人、普通なら決して出会うことのないはずの人間なのです。
というのも、一方の仙吉くんは社会でも最下層の見習い少年、もう一方のAは最上層の国会議員(しかも貴族の位を持った上流階級!)です。
言ってみれば、住む世界が違います。
ところが、それぞれ屋台の寿司屋に興味を持ったことで、「奇跡の出会い」が起こるのです。
そこからAのなかに、「あの少年に寿司をおごってあげよう」という思いが生まれます……。
さて、そうして物語は進んでいきますが、この2人の物語を図にしてみるとこんな風になります(クセジュ生にとっては、ちょっぴりネタバレですが)。
いかがでしょうか、綺麗な対称図形になっていますね。
小僧は普段なら縁のない寿司屋台へ「上向きの冒険」をし、Aもまた普段な縁のない庶民の世界へと「下向きの冒険」をします。それによって2人は出会い、そしてそれぞれの世界へと帰っていくのです。
作者の志賀直哉は短編小説の名手として、「小説の神様」と呼ばれていました。
その理由も、この小説を読むと見えてきます。図にすると一目瞭然な通り、物語にまったくムダがないのです。
よくできた小説というのは、図にしてみても美しいものなのですね。
3月はこの「美しさ」を生徒と一緒に発見し、人物の心情変化を読み取る面白さを味わっていきます。