2017インタビュー特集 ー大人のための子供を伸ばすマニュアルー

対談シリーズ

(最終更新日

クセジュが積み上げてきた指導法の集大成

大人のための子供を伸ばすマニュアル
完成にあたって──

 子どもたちが学力的にも人間的にも成長するための環境作りは、塾と家庭で共通認識を持ち協力していかなければ成り立ちません。クセジュではそのことを保護者会や懇談会、面談等の機会にお伝えしてきましたが、どなたにもわかりやすく伝えるためのツールとして、さらにご家庭で困ったときのバイブルにしてもらう為にクセジュ代表の鈴木を中心にこのマニュアルを作成しました。
 今回はマニュアル作成の経緯と具体的な内容について、代表の鈴木にインタビュー形式で迫っていきます。

聞き手 理系総責任者 池村卓人 解説 クセジュ代表 鈴木久夫





reporterマニュアルを通して伝えたいことは──

池村:大人のためのマニュアルは大まかに言うとどのような内容なのでしょうか?

鈴木:子どもを伸ばすにあたって、私たちのこれまでの経験と発達心理学を融合させた指導をクセジュではおこなってきました。そのノウハウを集約させたものがまさに今回完成したマニュアルです。

池村:かなりのページ数ですけれど、あえてこれを作成しようと思った経緯は何ですか?

鈴木:クセジュは1984年に開校し、30年以上東葛飾地区で教育活動をしてきました。私自身も25年近くクセジュで教鞭をとり、数多くの生徒や保護者の方々と接してきましたが、2011年にクセジュ代表に就任してからは、これまで作り上げてきたクセジュ流の指導法を、対講師は言うまでもなく、親御さんに対してもわかりやすい‘形’にする必要性を強く実感するようになったんです。

池村:特にここ数年、保護者の方が家で子どもにどう接してよいか困っているケースをよく見ます。そういう意味でこのマニュアルは非常に助かりますよね。

鈴木:まさにそこなんです。懇談会などをするとわかりますが、「あ、実はうちも同じ悩みを抱えているんです」という声が必ず出てきます。逆に言うと、懇談会のような機会でもなければそのお母様は悩みを共有したり解決策を聞くことがなかったということにもなります。それならば、親御さんからよく出る質問や悩みに対してクセジュの教育理念としてどう答えるか、というバイブルがあったらとても便利じゃないですか。

池村:納得です。だからこのマニュアルには、保護者が知りたい内容を中心にまとめ上げているのですね(※マニュアルの目次写真参照)。

鈴木:保護者の方によっては、「こんなことでわざわざ電話するのも…」と、相談することに対して二の足を踏んでしまう人もいると思うんです。そんなときにはこのマニュアルを参考にして、ご家庭それぞれの状況に合わせてアレンジした対応をしてもらえたらと考えています。

reporterWチャンスと独自のAL型学習法とは──

池村:マニュアル作成にあたって準備が大変だったと思いますが……。

鈴木:準備にはおよそ2年かかりました。まずは各教室からクセジュのイベントに数多くご出席していただいている保護者の方に『ボルドーの会』と題してお集まりいただき、クセジュの指導システムに対して様々なご意見を伺いました。それがマニュアルのベースになっています。クセジュは合う生徒、合わない生徒がはっきりしている塾と言われることが多いですが、一見合わないと思われる生徒を伸ばすためにはどうすればよいかというヒントなどを数多くいただき、親御さんの協力は本当に助かりました。

池村:先ほどの「合う」「合わない」に言及いたしますと、クセジュは学問の‘背景’や‘起源’に触れて子どもたちの知的好奇心にうったえる授業をしていますから、「そんなことより早く解き方を教えて!」という生徒や、「とにかく手っ取り早くテストの点数を上げてほしい」というご家庭には確かに合いにくいかもしれませんね。

鈴木:その話の最も分かりやすい例が、中学校の定期テストについての考え方でしょう。特にクセジュは定期テストを指導する塾ではなく、独自のカリキュラムで「クセジュでしか学べないことを学ぶ場所」という認識を我々は開校から意識しています。特に学問の本質に触れる瞬間の喜び・驚き・感動を与えることによって、そこからさらに主体的に学ぶようになるきっかけを与えることができたとき、クセジュ講師冥利に尽きると感じる次第です。一方で独自のカリキュラムで学習していくクセジュでは、授業の中で学校の定期テスト指導をするのは時間的にも難しくなります。

池村:学校の補習塾ではないので、構造的にそうなりますね。

鈴木:クセジュにお子様を通わせていただいている多くの保護者の方々にしてみれば、学校の成績も気になるのは当然だと思います。しかしながら、ある意味ではクセジュに通いクセジュでしか学べないことを学びながら学校の学習も身につけてもらうWチャンスを親御さんはお子様に与えていると言えるわけです。

池村:なるほど。「学校で教わる教科書の内容」と「クセジュでしか学べないこと」の両方に触れる絶好の機会というわけですね。といっても、もちろんクセジュの授業では教科書の内容もしっかり包含していますよね。学ぶ時期が多少ズレてはいますが。

鈴木:クセジュの授業を理解し、学校で学習する内容も盤石にするというWチャンスを確実にものにするための方法を考えたとき、クセジュらしさが前面に出た手法として編み出したのがクセジュ流AL型学習法です。これは前述したボルドーの会でクセジュに通われている保護者の方々のご意見を参考にしながら、クセジュのやり方に沿って、さらにはクセジュで今まで培ってきた経験を踏まえて編み出した手法です。Wチャンスを主体的にものにする唯一無二の手法といっても過言ではありません。

池村:それはどのような方法なのですか?

鈴木:簡単に言えば授業を受ける主体は生徒であることに着目し、授業中にメタ認知力(※詳しくは後半で解説)を最大に活性化させる手法です。とにかく授業を大事にする、それだけ伝えても抽象的なので、生徒の学力状況やタイプによってS型、E型など授業を受ける際の‘型’を提示し、それに沿って授業中に自分が何がわかっていて何がわかっていないかをノートの取り方を工夫しながらはっきりとさせていくのがAL型学習法です。特に学校の授業中にそれを意識して臨むとまず何を学習すればよいのかが主体的に見えてきて、受動的にワークを繰り返すという学習と一線を画し、かなり高い成果が期待されます。現にこのやり方で学校の成績がかなり上がったという声が各教室から数多く聞こえてくるようになりました。塾が積極的に定期テスト対策をすることは目に見える成果が表れたとしても、一方で子どもたちの学力を伸ばす際に最も必要なメタ認知力を埋没させてしまうのです。だからこそクセジュのこのやり方が今後の主流になってもらいたいですね。

池村:ここ数年で文科省が推奨する‘アクティブラーニング’という新しい学習方式が浸透しつつありますが、一般に言うそれとクセジュのAL型法の違いは何ですか?

鈴木:主導権を誰が握るかというところに根本的な違いがあります。文科省が奨励するアクティブラーニングは教える側の授業の工夫の一環として浸透しています。生徒の発言を数多く引き出すにはどうするか、授業に対する参画意識を高めるためにはどうすればよいかという観点からディベートや発表形式の授業を取り入れたり、様々な工夫を先生が主体となってやっています。うまく生徒の主体性を引き出すことができる技量がある先生はうまくいきますが、そうはでない場合はディベートや発表会形式の授業がアリバイ的、形式的なものに終わってしまう可能性があります。そうなると他にどういうやり方が理想なのかという方法論に特化する風潮に拍車がかかってしまい、結局生徒が置き去りにされる可能性がありますね。

クセジュ流AL型学習法とは

授業を一番の学習の場にするべく、得意教科と苦手教科に分けてそれぞれ目的をもって臨む。特に自分の学力を客観的に把握する「メタ認知力」を活性化させながら授業を受けることが大きな目的である。これにより家庭学習の時間、テスト準備の時間が大幅に削減され、家で自分の時間が十分に持てるようになる。
この学習法がうまく機能していると、自ずとノートのとり方が変わってくることと、あくまで‘生徒側’の授業を受ける技術であるところが特徴。

池村:ということは、クセジュのAL(アクティブラーニング)は先生側の取り組みではなく、生徒がどのように工夫して授業を受けるか、というものなのですね?

鈴木:その通りです。クセジュのAL型学習法は全く逆で生徒が主体となって本来備わっているメタ認知力を活性化させるもので、それぞれの教科でどういう授業の受け方をすればよいのかを考えてもらうやり方です。先生がどんなタイプの先生でもそれぞれの教科の特性、自分の学力にあった授業の受け方、ノートの取り方に沿って授業を受けるので結果としてメタ認知力が活性化され、授業を受けることによってその後どういう勉強をする必要があるのかまで主体的にわかるやり方です。先生の好き嫌いによって教科の得意不得意が決まるという従来の構図を根本から覆す方法です。繰り返しになりますが、クセジュの生徒の中でもこのやり方がマッチして成績が爆発的に伸びている生徒が増えてきています。

池村:具体的にそれを生徒はどう実践し、先生はどのようにサポートするのですか?

鈴木:実際に先生たちは授業後にノートを集めたり、学校のノートを持ってこさせたりして、生徒それぞれが意識している授業の‘型’に沿って授業を受けられているか、メタ認知力がどのくらい活性化されているのかをチェックしています。中にはまだまだ先生が板書したノートを写すだけで終わっている生徒もいますが、多くの生徒はノートの取り方にオリジナリティが出てきています。また月に一度のペースで先生を集めたAL型学習法の勉強会を実施しています。そこでうまくいった例、理想的なノートをとっている生徒のサンプルなどを共有たり、メタ認知力を授業中に活性化させるための3ステップの効果検証を行うなど、その精度を高めるための研鑽に励んでいます。

AL型学習法の「4つの型」

●E型『得意教科の授業を受ける場合』~授業は理解と定着の場とする~
授業中に宿題まで終わらせる気持ちで集中して臨む。先生が口頭のみで板書しなかったこともノートにメモし理解していく。ワークや問題集をやりながら授業を受けるという方法も効果的。その昔在籍していたE君の方法としてE型と名づけられた。
●S型『苦手教科の授業を受ける場合』~授業は確認と発見のとする場とする~
授業の中で自分が忘れていた知識や理解していなかった原理と、初めて知った知識に分けて、ノートを工夫してそこに書き込めるようにする。クセジュ代表の鈴木久夫本人が学生時代に実践していた方法であることからS型と名づけなれた。

(※他にも生徒オリジナルの目的を設定したO型、これまでの授業の受け方を踏襲するP型の計4つの型がある)





reporterキーワードは‘メタ認知力’の活性化

メタ認知力とは

現在進行中の自分の思考や行動そのものを客観的な対象として認識する能力のこと。
学習面で言えば、自分は何を分かっていて、何が足りていないか(知識が定着していないのか、演習が足りないのか等)ということを、客観的な視点で捉え、以降の勉強に必要な行動を正しく把握して実行に移すことができる能力。

池村:この方法をしっかり実践するには、それこそメタ認知力を発揮して「勉強」というものを客観的に捉えなければなりませんね。生徒や保護者にその視点を持ってもらうためにしていることは何かありますか?

鈴木:生徒に対してはクセジュに通う意義、特にWチャンス理論を説く機会を数多く作っています。数ある塾の中からなぜクセジュに通っているのか、通うことによってどういうメリットがあるのか、そもそも自分自身は今クセジュに主体的に通うことができているのかどうかという問いを考えることによっていろいろな意味で我に返ってもらう機会を作っています。一方で保護者の方々には頻繁に保護者会等を通して「クセジュで学ぶことは2020年以降の大学入試制度改革にマッチすることが数多くあり、さらにその後社会で活躍する際の原動力になるための礎を作る大きな機会になっている」ということを知ってもらうための啓蒙活動に力を入れています。

池村:全教室の生徒を集めて行う集会や保護者イベントは、これまで話に出てきたことがらを周知徹底させるためにあるのですね。

鈴木:そうです。そして同時に子どもの学力に関しては単なる現象としてとらえずにその背景に何があるのか、子どもを伸ばすためにはどうすればよいのかを知ってもらうために発達心理学的な側面とクセジュ指導の経験的な側面を融合させたオリジナル理論を保護者とクセジュ講師が共有できるような場も必要です。その一環として今回、“大人のための子供を伸ばすマニュアル”という形で冊子化することによってより共有の精度を高めようと考えている次第です。

池村:最後に、今後の方針をお聞かせください。

鈴木:生徒には早い段階でクセジュ流AL型学習法を浸透させその成果を実感してもらうことによって自信をもって学習できる体制を作りたいです。同時に「クセジュでしか学べないことを学びにクセジュに通う」という目的意識をより鮮明に持ってもらえるように教える側の授業の工夫、カリキュラムや授業計画の精度を向上させる取り組みに力を入れてまいります。親御さんに対してはクセジュの方針を深く理解して、子どもの精神的成長を促し、主体的な学習によって高い学力がつくような環境づくりを保護者会、懇談会、講演会というイベントそして今回お配りする“大人のための子供を伸ばすマニュアル”を通してサポートできる体制を盤石にしてまいります。生徒にはいろいろなタイプの子がいますし、学力状況も様々です。どのようなタイプの生徒でもクセジュに通うことで精神年齢が上がり、主体性が育まれることによって高い学力が身につく、同時に学ぶことそのものに関心を持ちいつまでも学問に触れる機会を作り続ける人生を送る、そのような生徒たちを数多く輩出できるように日々邁進していく所存です。

池村:本日はありがとうございました。