〇2020年大学入試改革でいったい何が変わるのか?
2020年に大学入試が大きく変わることはご存知の方も多いのではないでしょうか?私がこの情報を耳にしたのは今から6,7年前のこと。当時はウワサ程度のものでしたが最近では新聞の紙面にもこのトピックに関する記事を目にするようになり、いよいよ現実味を帯びてきています。
ところが、様々な情報が出るにつれ却って混乱している皆さんもいるのではないでしょうか?それもそのはず。英語では外部模試のスコアが受験に関わってくると言ったニュースがあったかと思えば、その後、東京大学は当面外部模試のスコアを当校の判定材料に使うつもりはないというコメントを出したりするなど、現場自体が混乱しているのです。
これから大学受験を迎えるお子様、そしてその親御さんにとってみれば他人事ではないでしょうから、このような混乱はただ不安を助長するだけです。
今回は、そんな皆さんの不安を少しでも解消できればと思い筆を執りました。
さて、センター試験が無くなる、高校在学中からの成績が大学入試に影響する、英語では外部模試のスコアが採用される…、このような試験システムの変更はまだ未決定な部分もたくさんあり、当局も混沌とした状況であることは先ほどお伝えました。
しかし、結論から言うと、これらのシステム面の変更についてはさほど重要なことではありません。どのようなシステムを採用したとしても、「学力がある人物が合格する」からです。
では今回の改革で一番重要な点は何か?それは「出題内容の変化」です。
〇予想問題から見える、新入試の「出題内容の変化」とは?
これは、センター試験を運営している独立行政法人大学入試センターのホームページに掲載されていた「大学入学共通テスト」のモデル問題例です。
(引用:https://www.dnc.ac.jp/daigakunyugakukibousyagakuryokuhyoka_test/)
この問題は、「数学Ⅰ」からの出題です。皆さんはこの問題をご覧になってどんな印象を持つでしょうか?確かにこれまでのセンター試験と比較してみると、問題の“見た目”はだいぶ変わっています。「我々が想像する数学の問題」とは少し違ったイメージではないでしょうか?
数学の問題と言えば、どちらかと言えば問題自体はシンプルで数式と短い問題文から問題が構成されていることが多いです。その点、この問題に関しては問題文自体がそれなりに長い。銅像という身近な例をトピックにしながら、ストーリー仕立てで問題が進んでいくという形式です。
ここで私が“見た目”と言ったのには意味があります。長年数学を教えてきた者として言うならば、このサンプル問題はパッと見の出題形式を変更しただけに過ぎず、本質的にはこれまでと同じレベルの数学的思考力しか要求されない問題であるということです。つまり、見た目が変わっただけで、中身は何も変わっていないと言うことです。
〇出題形式の変化だけで正答率が変わるのは何故?
本質的には変化が無いということを言いましたが、このサンプル問題の正答率は47%だそうです。モニターとしたのが、幅広い学力層の大学一年生を対象にしたものとのことですが、問題のレベルからするとこの47%という正答率は低いというのが私の見解です。実はこの問題、高1で学ぶ余弦定理を利用していけば比較的簡単に答えが出せるのです。
ではなぜ半数の生徒は正答できないのでしょうか・・・?
それは、多くの受験生はこの問題が「本質的には余弦定理を使うだけの簡単な問題」ということに気づかないからです。何故気づかないのか?ここに大きなポイントが隠されています。
ひとことで言うと、この問題を正答できない人は、問題文の「迷彩の目くらまし」にあっているのです。大学受験の時期に余弦定理を使えない受験生が50%近くもいるということはまず考えられません。今まであまり見たことがない出題形式、そして数学の問題でありながらだらだらと書かれている問題文に惑わされ、解答に必要な条件と、問題を解くためのポイントを見失ってしまうのです。
数学的な思考力や、立式したものを正確、迅速に処理する計算力を発揮する以前に、問題文を正確につかむ力が弱いと正解に至らないというわけです。
「あらゆる教科-理数系の教科においても-、国語力(読解力と記述力)が要求されるようになる」
これこそが今回の入試改革の一番の肝です。
後半はまた次週お話します。