2021 クセジュ中学部対談

▶︎中学生を見守る親の上手な関り方・周りの大人の在り方

佐々木:先ほど新しい入試で力を発揮する生徒の特徴として、「自立」というキーワードが出ました。当然自立している生徒は学力も伸びるし、受験も強い。親も当然子供の自立を切に願っているわけですが、現実にはこれが言うほど簡単な事ではありません。「先生、うちの子言われたことしかやらないんです」だとか、「もう少し目的意識を持って自分のために勉強して欲しい」と言った親御さんからの相談を頻繁に受けます。

松岡 : 難しいですよね。大人が言えば言うほどそれとは逆の方向に行くこともありますし。space-3014206-16936690615v10-2812694-3840329
土肥 :
私も中学時代を思い返すと、母親とはしばし険悪な関係になっていましたね。「ゲームばかりやっていないで勉強しなさい!」という親の言葉に一番腹が立ったのを覚えています。その言葉が親子喧嘩の開戦の狼煙となっていました。

佐々木:土肥先生のように親と口論するようなエネルギーがあれば、方向付けさえすれば勉強にもエネルギーが行きそうですが、中には反抗ではなく、ただ無気力になる子もいますよね。

松岡 : 親御さんの圧力が強すぎたり、子供自身が優しすぎたりする場合に無気力になってしまうケースもあります。ユングの心理学でいう「グレートマザーに飲み込まれている」状態ですね。

土肥 : 親は、子供への愛情や親としての責任感から子供にとって良かれと思って話しているのに、なかなかそれが伝わらない。伝わらないどころか一層心配を大きくさせてしまう。

中村 : 親御さんの気持ちは私も痛いほどわかります。私も家庭に帰ると二児の父ですが、塾ではあれだけ余裕を持って生徒達の成長を見守り導くことができるのに、いざ自分の子供になると…何ですかねぇ、ついつい心配して感情が先に出てしまいます。

佐々木:今は親子の関係について目を向けていますが、これは親子に限った話ではなく大人と子供、もっと言えば自分と他者の関係と言えますよね。クセジュの先生も親御さん同様、受験が近づくにつれ、時に感情的な面は出ることありますよね。

中村 : それはあります。とても良い力を持っている生徒で、あと一歩努力すれば志望校を狙える力がつくはずなのに、何故か肝心の本人がやる気を出してくれない。もどかしい気持ちで、時にその気持ちを生徒にぶつけてしまうこともあります。

松岡 : 感情的になるのが悪いというより、それによって相手が我に返るとか、やる気になるかが大切ですよね。同じ接し方でも相手のタイプや状況によってはうまく伝わる場合もあれば、逆効果の場合もありますしね。

佐々木:同じ接し方でも正解、不正解になるのが人間関係ではないでしょうか。その点、クセジュでは伝統的に「一人一人の個性を見つめ、それぞれのタイプに合わせた指導」に力をいれてきました。その中で、様々なタイプの生徒に対しての効果的な働きかけ方についての蓄積があります。今年からはさらにこの経験に加えて「ユングのタイプ論」をベースにした、学問的な知見も指導に反映させています。

土肥 : ユングのタイプ論は昨年から講師の勉強会の中心でしたが、学術的に見てもこれまでの指導経験が間違っていなかったという裏付けが得られたことは自信につながっています。一方で、「こういった働きかけをすれば、あの生徒をもっと伸ばすことができたかもしれない」という新たな発見もありました。

佐々木:具体的にはどのような発見ですか?

土肥 : タイプ論をベースにしてみた時に、同じ光景を見たとしても自分とは全く違う思考、感情を抱くケースが沢山あることを学術的に知ることができた点です。私の場合、自分と似通ったタイプの生徒に対しての働きかけは容易にうまく行くケースが多く、一方で全く違うタイプの場合、信頼関係を構築するまでには多少の時間がかかることがわかりました。つまりタイプによって受け止め方や捉え方、認知の仕方が異なるということに気づいたのです。

佐々木:大人も子供も一人の人間ですからね。親と子供のタイプが全く異なる場合、感情が入れば入るほどコミュニケーションがかみ合わないということも起きうるということですよね。space-3014206-16936690615v9-5745025-8963301
松岡 : 
そう思います。ユングのタイプ論を発展させたMBTI(Myers–Briggs Type Indicator)では、人間を16のタイプに分類しています。さらに、その時おかれている境遇などによって状況はさらに複雑になりますが、「自分とは全く別のとらえ方をする人間が存在する」ということを学術的に知るだけでもコミュニケーションは円滑になると思います。

佐々木:さらに子供の自立をいかに促していくのかという観点に立った場合に最も重要な考え方として心理学者アドラーが唱えた「課題の分離」が挙げられます。

土肥 : 大人の課題と子供の課題を分けて考えるということですね。イギリスには「馬を水辺に連れていくことはできるが水を呑ませることはできない」という有名なことわざがあります。つまり勉強の環境を与えることはできるが、実際に勉強をするかどうかは子ども本人の課題であるということです。

中村 : かなり突き放した言い方で一見極論とも捉えることができる考えですが、この課題の分離という考え方をベースに置いた受験指導は結果として自立を促し、成功を収めます。 今年は受験生を持つ親御さん対象にした受験期セミナーでも課題の分離をもう少し掘り下げて共同課題の設定の仕方をケーススタディ形式で行う予定です。

佐々木:いきなり課題の分離をしてくださいと言われても難しいと思いますが、”共同課題”をワンクッション置くことで少しずつ周りの大人は「受験そのものは子供自身の課題」であると自覚できるようになるでしょう。

土肥 : クセジュでは保護者会や親向けのセミナーなどでユングやアドラーといった様々な心理学を用いて親子関係を学術的に見ていく機会なども設けていますが、子供たち自身にも機会があればユングのタイプ論は伝えていきたいと考えています。実際、中学生も様々な人間関係(学校の先生や先輩、友人)などで悩む時期ですからね。

中村 : 最終的に子供の自立を促すためには、子供をとりまく大人-それは親御さんだけでなく我々先生も含めて-が、タイプに合わせて子供の個性を引き出すための働きかけを行うことが大切だと言うことですね。space-3014206-16936690615v11-3934418-8836066
佐々木:
もう一つあるとすれば、「親自身が自分の人生を充実させる」ことも非常に大切だと思います。子供の成功が親の喜びであることに変わりありませんが、その一点しか親の喜びが無いとしたら、それは子供も重圧が大きいでしょう。親自身が何かに夢中になっている、活き活きと何かに取り組んでいる、このような姿を見せること自体が何より子供のやる気を引き出す要素となります。

土肥 : それは言い換えると子供の人生と親の人生を分けて考えるということですね。心理学者エリクソンのライフサイクル説をもとにした親向けの講座を昨年行いました。子供の人生ではなく、自分の人生を主体的に考えることが結果として子供の自立につながるという事例を紹介したところ我に返る親御さんが多かったです。

松岡 : 最近はライブ配信授業をする機会も増えましたが、時にお子様の後ろに親御さんがいて一緒にクセジュの授業を楽しんでくれているケースも見られます。子供は少し嫌かもしれませんが、必ず親御さんの楽しんでいる姿勢は子供にとって大きなプラスとなっていると思います。

中村 : 親だけでなく我々すなわち子供の周りにいる大人がいつまでも学ぶ姿勢を持ち続けること。そして何事も学びと捉える姿勢を持ち続けることが大切ですね。

佐々木:クセジュでも保護者向けの子育てに関するセミナー以外にも、純粋に親自身が学問の楽しさを再発見できるようなイベントも積極的に設けていきたいと思います。我々講師が先陣を切って、学問の魅力を自らが体現する形で伝えていきたいですね。皆さん、長くなりましたが本日はいろいろなご意見ありがとうございました。

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