2016年度高校入試結果を熱く語る!クセジュ代表 鈴木久夫×菊地健哲 クセジュ本部イデアル代表/クセジュ高校入試責任者
2016年度入試の動向は?
─今年はかなりクセジュ生の躍進が目立ちましたね。そこでまず、今年の高校入試全体としてどのような傾向があったのか教えて下さい。
菊地:顕著だったのが、都内の私立大学附属である青山学院高等部・中央大学高校・慶應女子などに受験者が殺到しました。エスカレーター式に大学へ行けるということで、景気の良し悪しに影響を受けやすいですからね。茨城県・埼玉県の私立高校は例年通り実質倍率が1.1倍~1.2倍あたりの学校が多かったです。これは中学校での成績次第で合否がある程度見えてくるので、ほぼ合格するだろう生徒ばかりが受験するためです。今年はついに近隣の高校で1.1倍を切ってしまう高校もありましたね。生徒募集に苦労しているとは聞いていましたが。
─地元である千葉県についてはどうでしょう。
菊地:この辺りでは専修大学松戸と芝浦工大柏の高倍率は相変わらずでした。特に芝浦工大柏は明らかに一昔前のレベルに戻り、難化したと言ってよいでしょう。我々のいる東葛エリアはそもそも難関私立高校がとても少ないので、必然的にこの2校の受験者が多くなります。公立高校はトップ校の東葛飾高校で前期が2.79倍、後期が2.09倍と、激戦だった昨年よりやや緩和されたものの、上位校をはじめ例年通り高倍率でした。
─入試問題のそのものについて次第に変わりつつあるとよく聞くのですが、昨今のトレンドや特徴的な傾向があれば教えて下さい。
鈴木:とにかく記述力・表現力を問う問題が増えていますよ。大学入試が変わりつつあることが背景的要因ですが、その最たる例が国立高校の問題です。
菊地:お茶の水女子大附属などは特徴的ですよね。例えば今年は社会の地理で記述問題が出たんですが、戦時中の状況というバックグラウンドの知識がなければ正答できないものでした。なかなかレベルが高い。
鈴木:選択式の設問であっても、‘正しいものを全て選べ’という形式のものが多いから、本質的な理解や確かな知識がないと対応できないものになっているのは確かですね。
菊地:理科・社会を中心に「一問一答式」で条件反射的に答えるような勉強では完全に通用しないものになっています。だから言葉の定義や原理原則をしっかり理解して、自分の言葉で他者に説明できる力がないと周りに差をつけることはできないでしょうね。
高校入試は変革の時期へ
鈴木:ちょうど理社の話が出たのでついでに言うと、2017年度の千葉県内の上位私立高校は5科目入試を採用する学校が増えます。とにかく幅広く興味関心を持って学んでいる生徒を獲得したいということでしょうね。もちろん、その先には国立大学への合格実績を伸ばしたいという狙いもあると思いますが。
菊地:そうです。新たに5科目入試を採用するのは、市川高校、昭和秀英高校。現在前期入試で5科目、後期入試で3科目を課している渋谷幕張高校では前期の5科目入試のみに。また、かつて5科目入試だった芝浦工大柏高校は特進のGS(グローバルサイエンス)クラスのみ5科目入試が復活。2017年はまさに千葉県私立高校の5科目入試移行元年と言えるでしょう。
鈴木:おそらくこの流れは加速していくでしょうね。というのも、3科目入試は私立高校側にとって、受験しやすさがある反面、悩みの種でもあったからです。
─どういうことでしょうか?
鈴木:クセジュ生で難関私立高校に進学した生徒からよく聞く話ですが、周りの生徒たちは国語・数学・英語の3科目に絞って塾で特訓してきたから、理科・社会の知識が極めて乏しいということです。これは入試突破のためだけに勉強することの典型的な弊害ですよ。そのことに私立高校側も気づいているからこその入試形態の変革です。
菊地:一方で私立第一志望でも5科目必修で勉強してきたクセジュ生は、進学後に非常にスムーズなスタートを切ることができていますよ。ちなみに、これまでも一部の上位私立高校、例えば慶應女子の適性検査(推薦入試)では、理科・社会の根本理解を求める設問も課しています。
─どのような設問ですか?
菊地:例えば「白夜について英語で説明しなさい」とかね。この問いは地理的な内容ですが、理科の地学分野の理解もあわせれば、北緯(南緯)66.6度以上の場所で見られることや、北極点(南極点)では半年間続くという深い解答も可能になります。まぁ、英語でそこまで書けるかどうかは別として、このような知識と理解があるのとないのとでは、何かを論じる上で明確な差になることは間違いない。
鈴木:これから入試問題を通じて「教養ある生徒に来てほしい」というメッセージを発信していくのか、それとも現状維持のままでいくのか、その部分に端を発して学校のレベルが二極化していくはずです。
クセジュ生躍進の秘密とは
─クセジュ生が入試において力を発揮している要因を教えて下さい。
菊地:まずは授業で私たちが価値を置いている部分の影響が大きいですね。一般的に覚えれば済むと思われているもの、例えば英単語や理社の用語、数学の公式などについて、クセジュではできるだけ背景知識や歴史的な意義も含めてレクチャーしています。一つひとつの内容について知るからこそ、違う角度から問われたり、根本の理解を試されたときに強いんです。
鈴木:これは他の講師も対談で語っていますが、本当にクセジュだけにしかない強みだと思いますよ。‘当たり前’だと思われていることにこそ「なぜ?」の目を向けていくこと。それを小学生や中1の段階から徹底しています。非常に地道な取り組みですが。
菊地:むしろ、それだから子どもたちは新鮮な気持ちで楽しみながら学んでいると思いますね。表面的な面白さで終わらないからこそ、彼らの知的好奇心に火を灯すことができるんです。だから正直に言うと、「受験学年の中3から…」という感じでクセジュに入るのは少し遅い。出来るだけ早い段階からウチの授業の醍醐味を味わってほしいですね。
鈴木:あとは先ほど話に出た「記述力」「表現力」ですね。授業や課題で‘書かせる’作業をすることは当然ですが、口頭での生徒とのやりとりの中でも論理性を徹底的に追究していきます。普段からそのように濃い授業をやっている結果として、彼らに骨太の力がつく。これはクセジュ創立時からの伝統で、ちょっと他では真似できないことですね。
これぞクセジュ受験指導の真髄
─受験指導で苦労するのはどのような場面でしょうか?
菊地:一つは成績のよい生徒ほど‘我流’の勉強法が確立してしまっていることですかね。その方法がある一定のところで頭打ちになって最難関校の入試では通用しないことを心の底から理解してもらうことには骨が折れます。
鈴木:頑固な生徒と菊地先生は半分ケンカ状態になっていることも多いですよね。まぁ、いつも生徒が完全に論破されているけれど(笑)。
菊地:入試が終わった後には皆感謝してくれますけどね。そこに至るまでの過程は大変ですよ(苦笑)。
鈴木:あとは本番が近くなるほど‘自分の弱点から目を背ける’生徒が出てくること。これは単に苦手科目を避けるという話ではありません。自分が抱えている本質的な課題を深層心理レベルで見て見ぬフリをしてしまうんですね。
菊地:それはありますね。例えば、‘この単元は知識が抜けすぎていて、本当は中1の基本に戻って理解し直さなければならない’はずなのに、ただ盲目的に問題を解いてばかりいる、などですね。要するに「大丈夫だと思いたい」わけです。
鈴木:そういう場合、過去問や模試の自己採点が妙に甘くなってしまうなどの現象として表れることもあります。そういう事態にこちらも敏感になって、いち早く手を打つ必要がある。だから常に生徒の表情とか自習室での様子などにいつもアンテナを張っています。この部分には他学年担当の講師もよく目を配ってくれているので、常に情報交換しています。
菊地:不安や焦りから、生徒本人が迷走していることをいかに気づかせるか。要するに目を覚まさせなければならない。この部分こそがクセジュ講師の腕の見せ所かもしれませんね。
─今回の受験指導で特に取り入れたことや、クセジュオリジナルの受験指導法は何ですか?
菊地:毎年やっているのが、月に一回ほど全教室の中3担当講師を集めて、私が生徒の指導法に関するレクチャーをすることです。主に『この時期にはどのように声をかければよいか』『理解度を緻密にはかる授業法』『生徒をやる気にさせる褒め方と叱り方』といった内容です。若い先生にも私と同じレベルで生徒指導ができるように、会議以外の場面でも日々語りましたね。
鈴木:あと今回の受験指導で特にやったことは、「全教室中3生徒対象決起集会」かな。
菊地:やりましたね! 教室ごとにもたびたび集会などをやったりもしますが、一同に会するイベントとしてもやってみたんです。入試が終わってから生徒に聞いたら、「あの集会で一気にスイッチが入った」と言ってくれた子も多くて、やってよかったと思いました。
鈴木:あとは現場の状況を菊地先生がかなり細かくチェックしていましたよね。各教室はずいぶんと助かったんじゃないかな。
菊地:そうですね。全教室全生徒の模試の成績を私がチェックして、成績が下降している生徒などは、担当の講師に「この子にこういう指示を出して!」という感じでアドバイスしました。現場の講師もかなり頑張ってくれていましたが、やはり生徒との距離が密であるがゆえに問題点が見えにくくなることもあります。だから客観的な視点で見てあげる存在も必要で、それが私の役割だったわけです。これは2017年度も継続してやっていこうと思います。
─お二人から見て、受かりやすいタイプ、失敗しやすいタイプの生徒は?
鈴木:ちょっと挙げてみましょうか。
入試に受かりやすい生徒
- 良くも悪くも頑固な生徒(意志が強い)
- 志望校に絶対に行きたい理由がある生徒
- 修正能力が高い生徒
- 親が子どものことを信じてくれている生徒
- わからないことを隠さない生徒
- 調べる習慣がある生徒
- 部活動や生徒会活動など勉強以外でも多忙な生徒
入試で失敗しやすい生徒
- 現実を直視できない生徒
- 目標とする高校をなかなか決められない生徒
- 修正することができない生徒
- 勉強しているかどうか家で親にひたすらチェックされている生徒
- 自己採点を甘くつける生徒
- 「勉強してますよ」「大丈夫」とやたらに言う生徒
- 自習室に長時間いるだけの生徒
菊地:本人の問題として、まずは志望校への明確な目標意識の有無ですね。やはり行きたい高校を早い段階から決めることができた生徒は強いです。だからクセジュでは高校紹介や大学の学部学科紹介など、受験学年になる前から先々を見据えるためのイベントが多い。親向けの私立高校説明会などもあります。
鈴木:現実を直視できるかどうかというのも大きい。‘未熟な自分’を受け入れることができれば「わからないことを隠さない」わけだし、逆であれば「自己採点を甘くつけてしまう」ということになります。ちゃんと自分と向き合えれば、当然ながら勉強の方向性も的確に修正することができる。
菊地:あと、駅伝や吹奏楽をやっている子は夏を過ぎても忙しいじゃないですか。多忙であることは一見すると不利に思えるかもしれませんが、そういう生徒ほど時間をうまく使ったりここぞというときに集中できたりもします。逆に夏で部活を引退して時間に余裕ができた生徒ほどダラダラしてしまう…なんてことも珍しくありません。
鈴木:それから意外に大きいのが親の接し方です。あまりにもダラけていれば小言の一つも言いたくなるのはわかりますが、勉強の具体的内容まで事細かにチェックするのはいただけません。生徒の主体性を奪うことはもちろん、何よりも「あなたを信用していない」という無言のメッセージを発することになってしまう。
菊地:全くその通りだと思います。家庭でのそういうオーラのようなものが子どもに与える影響は親が考えているよりはるかに大きく、意図せずに子どものやる気を削いでしまっているケースも多々あります。勉強面の細かいことは私たちの担当なので、そこは任せていただきたい。
鈴木:とは言っても、受験期の子どもへの接し方は、特に上に兄弟がいない場合などは親もどうするのがベストなのか戸惑うと思うんです。だからこそ我々が保護者対象におこなっている「受験期セミナー」に参加していただきたいですよね。
─さて、新たに中3受験学年が始まりました。お二人から受験生に向けてメッセージをお願いします。
菊地:とにかく塾をフル活用して下さい。そしてわからないことは「わからない!」と言う勇気を持つこと。そこから現実を見つめて志望校へ邁進する受験生としての勉強が始まります。
鈴木:「行ける高校」ではなく、「行きたい高校」を早く見つけよう。受験勉強は辛いものではなく本当は楽しいよ! まだクセジュに入っていない人は、これからクセジュで‘本質を追究する勉強’に楽しみながら取り組んでいきましょう!
─お二人とも、本日はありがとうございました。