数学対談―だから数学を学べ

対談シリーズ

(最終更新日

数学が好きな人も数学に困っている人も必読!

だから数学を学べ!!

高校入試は後半戦に入り、ここまでのクセジュ生の健闘が今年も光ります。本対談では数学科の講師二人が理系的な立場から「クセジュ生は入試に強いワケ」を語ります。国語座談会とあわせてお読みいただければ幸いです。

学問の厳密性を学ぶ最高の舞台

reporter―今年も高校入試でクセジュ生が躍進していますが、その要因を数学科の視点からお願いします。

池村:入試のみに特化した授業ではないから─もっとはっきり言うと、仮に入試科目に数学がなくても数学を学ぶ必要があると考えて授業をしているからです。はぐらかす言い方に聞こえるかもしれませんが。

佐々木:どんな理念のもとに数学を伝えていくか、というのは教わる子どもたちにとって最も大切なんです。そこが安直だと数学を受験突破のための単なる道具だと思われてしまう。クセジュではまず、数学はあらゆる学問に通ずる“厳密性”を学ぶ最高の舞台だと位置付けています。

池 村:その通りです。ものごとの因果関係を論理的に考える上で、まず根っこにあるのは“厳密に定められた前提”です。例えば「三角形とは何か」を曖昧に決め れば、その上に積み上げるもの全てが曖昧になります。学問の世界は奥深くて面白いですが、そこには丁寧に積み上げられた人類の足跡があるのです。そこに触 れずして問題を解くテクニックだけを伝えるのは言語道断です。

佐々木:数学は、学問全てに対する敬意と厳密な論理性を伝えやすい根本の教科なんです。その理念のもとに子どもたちに接しているから、自然と受験数学がただの通過点になっているのだと思います。

ひたすら追究する“ナゼ”

reporter―具体的な単元や項目を扱う際に気を付けていることは何ですか。

佐々木:先ほどまでの話だけ聞くと、おごそかで神妙な雰囲気の授業なのかと思われるかもしれませんが、実際は楽しく活発なやりとりを軸に授業をしていますよ。ただし、必ず‘根拠’を明確に自分の言葉で説明させることにはこだわっています。

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池村:そう。三十秒に一度は「ナゼそう考えた?」って訊いていますね(笑)。それと、“試行錯誤”させる時間を多くとることも意識しています。悩みぬいた末に数の法則や図形の性質に自ら気づくことほど大きな収穫はありませんから。

佐々木:そこに至るプロセスにおいて適切なサポートをしたり生徒同士で議論させることで根拠の怪しかった部分が次第に確固たるものになり、最終的に体系的な理解につなげる。これが授業の基本スタイルです。

池村:だから基本的に最初から結論を教えたりしないですね。与えられるのでなく自ら勝ち得た経験が確かな知識と思考力を定着させるからです。

佐々木:そういう意味で、根拠を問うことは「自分が本当に理解しているのか」を常に子どもたち自身に確認してもらうために必要であり、不可欠なやりとりなのです。

最も美しい共通言語

reporter―数学に対して苦手意識を持っている人にアドバイスはありますか?

池 村:「問題が解けるか解けないか」という観点で考えないでほしいですね。というのも、正解が出せるかということよりも‘数学的思考の意義’を分かっている ことの方が重要だからです。例えば難解な図形問題が解けたとして、それが人生において役に立つかというと、人によっては全くそうではない。でも、その結論 にたどりつく過程でどんな‘前提知識’を“どのように用いようとしたか”という試行錯誤に意味がある。

佐々木:ある意味、「解けないで悶々 と悩むことの価値」があるんです。なかなか解決できないことについて挑戦し続けることは、社会に出て生きることそのものじゃないですか。だから、よく言わ れる「解ける喜び」というものも必要だとは思いますが、「解けないこともまた美しい」という視点も持った方がいい。

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池村:しょうもない話を していると思います? でも、いたって真剣ですから(笑)。次に数学(図形)が人生において役に立つお話をさせて下さい。近代以降の数学、例えば三角関数 や微分積分などは、天文学や物理学を発展させるため必要に迫られて生まれた実用的な分野ですが、それを究めていった数学者たち全員が世の中に役立てるため に数学を研究したわけではありません。

佐々木:そうなんです。実用性と切り離したところで、数学という世界が持つ‘美しさ’に魅了されて生涯を費やした人も多くいます。そこにあったのは役に立つからやる、そうでないからやらないという問題ではない。

池村:何が言いたいかというと、数学に代表される“一見無駄に見える知的遊戯“を突き詰めた結果が、一周回って本当に世の中に役立つものになっているということです。その価値に気づくだけで数学を学ぶ意味はあるし、必ず人生に役立ちます。

佐々 木:今の話も含めて、私は数学の魅力や芸術性を理解することを「数学的感性」と呼んでいます。数式は最もシンプルな世界共通の言語ですよ。例えば『a²+b²=c²(ピタゴラスの定理)』とか『E=mc²(アインシュタインの相対性理論より)』などは、何よりも雄弁に世界の成り立ちや、普遍の法則を語りかけてくれます。そこには国や言語の壁 はない。

池村:だから入試問題のような‘正解が用意された問題’を解けないからといって敬遠しないでほしいんですよね。それよりも「こんな 美しい世界があるんだな」とか「細かい計算の部分はよくわからないけど、何をやろうとしているのかはわかったぞ」という気づきを大切にしてほしいです。社 会に出てからほとんど本格的な数学に触れることがなくても、そういう数学的感性を持っている人は必ず社会で活躍しています。

佐々木:大きな話になってしまいましたが、クセジュ数学科ではこのような観点で子どもと接しているので、必然的に歴史的背景に触れたりする機会が多いです。このような授業を受けたい人は、ぜひクセジュの門を叩いてほしいですね。

池村:まぁ、一方で宿題や小テストなどに不誠実な態度が見られたりしたら叱り飛ばすなど、小さな話も塾内の日常としてありふれていますが。入試に強い理由がそこだったりして(笑)。

reporter―クセジュ数学科の理念、よくわかりました。本日はありがとうございました。