「地球は本当に丸いのか」
地球が本当に丸いかどうか、説明できますか?
テレビや本などで地球の映像を見ると一目瞭然ですが、それがすべて本当なのかどうか、本当のところは分からないはずです。よくよく考えてみると、地球が丸いことを証明するには、例えばまっすぐに歩くなり船に乗るなりしてみて一周すると、同じところに戻ってくることで確かめてみることは出来ます。しかし膨大な時間がかかることは言うまでもありません。
実は今から約2300年〜2400年前(紀元前です!あの卑弥呼の時代からさらに300〜400年も遡った時代です)の古代ギリシャの地で、地球が丸いことを証明してみせた人物がいます。
その人物とは、知の巨人「アリストテレス」です。アリストテレスは、あのアレクサンドロス大王の家庭教師を務めていたことでも有名な人物です。
・月食の時、満月に映る地球の影が円形になっていること
・水平線の向こうからやって来る船が帆先から見えること
・北極星の高度が観測する地点によって変化すること
これらの理由を更に上回る理由を考えた人がいます。
それは「エラトステネス」という人物です。
しかも地球が丸いことを考えただけでなく、彼は地球の大きさも計算によって求め出しているのです。古代ギリシャの偉人「アルキメデス」は、多くの人が知っていると思いますが、実は彼の親友だとも言われています。素数判定法を研究していたことでも有名な人物です。
そんなエラトステネスはどうやって地球の大きさを考え出したのでしょうか。
普段アレクサンドリアでクラスのエラトステネスは、こんな噂を耳にしました。「シエネという町では、一年のうち一回だけ、影が消え、井戸の水に太陽が映り出す時がある」
気になったエラトステネスは、シエネまで足を運んで確認してみました。すると、夏至(1年で一番昼が長い日)の正午になると、確かに影が消え、井戸の水に太陽が映り出していたのです。
そこで深く考え込んだ後、エラトステネスはあることに気づきました。
「地球が丸いからだ」
当時、地球は平らなのか、球体なのかはたまた別な姿をしているのか意見が分かれていました。地球が丸いことの明確な理由を考え出しました。
エラトステネスは更にひらめきます。
「このことを利用すれば、地球の大きさも求め出すことができるのではないか?」
アレクサンドリアの南中高度と、シエネの南中高度の差を利用して、実際にエラトステネスは計算で地球の大きさを求め出します。
現代では、GPSを使ってコンピューターによる精密な計算で地球の大きさが測定可能です。当然そんな技術も無い時代に、誤差わずか15%の計算を成し遂げてしまったのです。
エラトステネスのスゴイところは、現象を見て、「へぇーそうなんだ。」で終わらせなかったところ。なぜそんなことが起こるのか。それによって他にどんな影響が出ているのかを考えたところにあります。
実は日本人でも同じようにして地球の大きさについて研究していた人物がいます。「伊能忠敬(2018年が没200年)」です。日本地図を描いたことでも有名な千葉県出身の人物です。しかし多くの人は勘違いしています。実は、彼は日本地図を描くことを目的としていませんでした。地球の大きさを計算するためには、ほかの地点へ移動する必要があります。伊能忠敬のいた江戸時代では、藩から抜け出すことは一般的に許されていませんでした。許可なく抜け出すと、「脱藩」として、刑罰を受ける対象となります。そこで、伊能忠敬は、「日本地図を描く」という名目で藩から抜け出そうとしたのです。つまり、「日本地図を描く」というのはあくまでおまけの理由であり、本当の目的は、「地球の大きさを求める」ということです。
これらは、3月、小6のナチュラルサイエンスで扱っている内容です。
実は、今年度の慶應義塾女子高校の推薦試験でこの内容が出題されました。
エラトステネスがどうやって求めたのか、実際の長さとの誤差が生じている原因とは。素数の分類をどうやって行ったのかなどについて答えていく問題です。
今回のエラトステネスの話は、円や扇形、拡大縮小、およその面積・体積の導入で扱ったお話です。
2000年以上も前の古代ギリシャには、現代科学にも通ずるレベルの研究をしていた人物がたくさんいます。アリストテレスの影響力が大きすぎたことやキリスト教の誤った解釈などにより、長きに渡り古代ギリシャの英知は封印されてしまっていました。ルネサンス・宗教改革と共にその英知を復活させたのが、コペルニクスやガリレオたちなのです。封印されていた時間はおよそ2000年近くにもなります。
古代ギリシャの他の偉人について、また何かの機会にお伝えしたいと思います。