成績向上のキーワード“メタ認知力の活性化法”
★勉強ができる生徒には共通点があった!
25年間講師として生徒指導を行う中で、“勉強ができる生徒”の共通点が明確になってきた。一般的に中学生は部活動や勉強以外の学校行事に多くの時間を割かれてしまう。よって毎日何時間も机に向かうことは物理的に不可能だ。また塾に通う人も多くいて学校の定期テストをサポートする塾に通えばかろうじて勉強時間は確保できるので、ある程度の成績をキープできることが多い。しかしそういった環境を利用せずに部活に励み、一方で成績上位をキープする生徒も数多く見てきた。いわゆる“勉強ができる生徒”である。
★最初に学ぶべきことは「授業の受け方」である。
彼らに共通するのは学校でも塾でも、とにかく授業を大切にする姿勢を持っているところである。ただし、「授業を大切にする」「先生の話をきちんと聞く」という言葉ほどあいまいで抽象的な言い方は他にない。私自身も成績が伸び悩んでいる子に対して「学校の授業ちゃんと聞いてる?」と聞いたことは今までたくさんあるが、多くの生徒は「ちゃんと聞いています」の一点張り。しかしながら授業のノートを見ると、ただ先生が黒板に書いたことをそのまま写しているだけの子が非常に多い。この行為は子供にとっては真面目に授業を受けているという証であり、先生と生徒の間にある授業の受け方に対する認識がいつまでも平行線をたどってしまう大きな要因なのだ。
思い返してもらいたい。授業の受け方を今まで学校の先生にレクチャーされたことはあるだろうか。ほとんどの場合、授業中にきちんと発表しノートをとるということが理想的な授業の受け方として評価されてきたはずだ。他方で、中にはノートを全くとらないのに成績が良い子もいるが、先生の評価はあまりよくない。点数をとっているにもかかわらず授業中の態度が良くないという理由で内申が悪くなってしまうことさえある。優等生的な授業の受け方と良い成績は必ずしもイコールで結ばれないのだ。
私は中高一貫の進学校に通っていた経験がある。約二人に一人は東大に入る年もあるくらいの超進学校である。私は東大に入れなかったほうの一人であるが、クラスの優秀な友人たちの授業の受け方を思い返すと、クセジュで指導してきた成績優秀な生徒の授業の受け方と非常に酷似していた。
★どちらにも共通するのは「自覚的にメモを取っている」点である。
先生が黒板に書いたことをただ機械的に写すのではなく、先生が話している内容を峻別し、その延長として自分の言葉でメモをとる。すなわち彼らは「今自分が初めて知ったこと、忘れていたこと、理解できないこと」を区別しながら授業を受けていたわけである。さらに先生のしゃべり方で眠くなったり、理解することが難しいときは、もう一人の先生すなわち“教科書”を読みながら独自に理解しようとする。当然このような姿勢で授業に臨めば眠くなることはほとんどない。同時に自分の今の状況がノートに克明に記録されるので家庭学習がかなり効果的なものになる。
★テーマは「メタ認知力の活性化」
授業を有効に活用している人は授業中を最大の勉強の場と据えているので、毎日の家庭学習にそれほど時間を割かなくてもテスト前に十分な準備期間を設けることによってかなりの成果が出る。中高時代の優秀な友人の授業の受け方、そしてクセジュで25年間指導してきた中で見てきた成績優秀な生徒の共通点は、「授業中に“メタ認知力”を活性化させていた」ことに尽きる。
ここで、メタ認知力とは「今この瞬間自分に何が足りていて何が足りていないのかを俯瞰的な視点から考察し、足りないものに関する補填の準備をする力」と定義する。当然ながらメタ認知力が活性化されれば授業板書以外にメモを取ったり、線を引いたり、印をつけるなどの作業が自然に発生する。授業をする際に私が板書したこと以外のことをメモする生徒をよく目にすることがあるが、そういう生徒はたいてい成績優秀である。言い換えれば“メタ認知力”がかなりのレベルで活性化されているのだ。
★「メタ認知力」をフル活用して授業を受けよ
世間一般ではアクティブラーニングという言葉がはびこっているが、真のアクティブラーニングとは子供たちのメタ認知力をいかに活性化させるか、そのためにはどういうノートの取り方を取り入れてもらうかにスポットを当てるべきである。生徒に何かを発表させたり、グループディスカッションをさせたりと、文科省が推奨するアクティブラーニングは結局先生がイニシアティブをとっている。しかし、本当の意味でのアクティブラーニングは生徒自身がイニシアティブをとるものでなければ意味がない。そのためにはメタ認知力を活性化させる授業の受け方を身につけてもらい、常に自分の今の状態を考察しながら学習できるように先生や親という立場にいる人はサポートするべきであると考える。メタ認知力を活性化させることが目的であればどんな授業でも絶対に眠くならないはずである。そして、これが身に付けば、おのずと成績は伸びていることだろう。
とは言っても実際どうやって授業の中でメタ認知力を活性化したらいいのか。
より具体的な方法については次回お話したいと思う。