実体験!集団指導、個別指導、家庭教師どれを選ぶべきか
学校の新学年は4月から始まりますが、多くの塾では3月から新学年が始まります。この時期に新しく塾に通うことを検討したり、現在通っている塾から別の塾へ変えたりすることを検討する形も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、今回は様々な学習形態について、集団指導塾でも個別指導塾でも家庭教師でも勤務した(アルバイト含む)経験を踏まえて記事を書いていきたいと思います。
〇家庭教師
私は大学生時代に3年ほど家庭教師をしておりました。担当した生徒は中3で、私立の中高一貫校に通っていました。お世辞にも成績は良いとは言えず、某中堅大学の付属高校でしたが、希望の学部への内部進学どころか、進学すらも少し危ぶまれる学力になっていました。そのような状態になった背景には様々な問題があるのですが、そういう教育上の問題には今回は触れずに、今回は教える側の面から話をしていきます。
彼を担当するときに、すでに私は埼玉県内の某大手塾でアルバイトをしていました。その塾は集団指導が中心で、1クラス10名から30名程度を抱えていました。当時はその塾で2教室を掛け持ちしており、週に6回の授業を担当し、約100人の生徒たちと接していましたから、彼の学習状態のマズさは1回目の授業を担当して即座に認識しました。
家庭教師を担当して驚いたことは(その家庭教師派遣会社が特別なのかもしれませんが)月に1回程度B5で1枚程度の報告書をフォーマットに沿って郵送するのみで、特に何も派遣元へのフィードバックがないということです。派遣会社と電話したのは、新しい派遣先の紹介と退職するときのみでした。
ただ、個人的にこのままでは、
「彼の状況は何も改善されない」
と思ったので、意を決して(当時はまだ10代でしたから勇気が要りました)保護者の方に「このままではマズい」ということを、彼の状況を踏まえ伝えました。そしてそれを根本から改善していこうと考えたのです。
ここでポイントなのは、そのような状況を派遣会社に伝える機会がないということです。先に話題に出した報告書にもそのようなものを書くようなところはありませんでした。
もちろん、大手の家庭教師派遣会社でしたらフィードバックシステムが機能しているところもあります。けれども、中小規模であれば上記のようなことも往々にして起こり得ます。(もっと驚いたことが、授業料と私に払われる賃金が同額だったこと。つまり、この派遣会社は授業ではなく教材の売り上げのみで利益を上げているのです。そのときに授業内容に無関心なことに合点がいきました。)ただ、派遣される講師が研修されているとはいえ、講師によってその効果が変わることは間違いないと言えるでしょう。実際、私がたまたま彼の状況をマズいと思い、改善しようと思っただけで、それをする義務は私にはなかったわけですし、なるべく楽をして余計な波風は立てたくないと思うアルバイトは実際に多いでしょう。
家庭教師のメリットは移動しなくてよいということでしょう。
「家ならば保護者の目が行き届くし安心」とか「直接先生と話せるから安心」
と思うかもしれませんが、第三者によって指導されることによって生まれる緊張感がなく、効果的な指導が行われにくいと言えるでしょう。
それは、私が勤務していて最も感じたことです。
〇個別指導塾
私が埼玉県内の学習塾で、アルバイトで講師をしていた先は、個別指導も併設している塾でしたので、そこで何人かの生徒を担当しました。その塾は生徒2人に対して、1人の講師が受け持つ形態をとっていました。塾によっては6人くらいを受け持つこともあるそうです。
通っている生徒の学力も様々でしたが、学校での学習に苦戦している生徒が多かった印象があります。もちろん、時間の都合がつきやすいという理由で通っている生徒もいました。個別指導は講師さえ都合がつけば日程の調整がしやすいので、部活動や習い事で忙しい生徒にはとても魅力的であると言えます。
学校の授業に苦戦している子にとっての難関は定期テストです。それをその子に合わせて教えることができるので、苦戦している子にとっては非常によい形態です。一方で、入試についてはそうでもありません。これは家庭教師にも言えることなのですが、個別指導塾や家庭教師では必然的に会社は多くの講師を必要とすることになります。ですから、講師のレベルの標準化というのは非常に難しい問題です。定期テストはまだしも、入試の情報や入試問題傾向を熟知した講師を養うことは容易ではありません。しかも、それが大人数となれば不可能に近いと言えるでしょう。実際、多くの個別指導の塾が入試を得意としていないのではないでしょうか。個別指導の塾のHPやチラシで、「定期テストで何点アップ!」などという文言は見ても、「〇〇高校に何名合格!」という文言はほとんど見たことがありません。これは、実際にHPを見て確認してみてください。わかりやすく書いてある大手個別指導塾は皆無と言ってよいでしょう。
これにはもう1つ大きな理由があって、その生徒が自身の位置づけを知る機会が少ないということがあります。埼玉では北辰テストと呼ばれる会場模試を月1回程度受験するのが受験生の慣例ですが、それ以外で第一志望校の受験者の中での位置づけを知りえないですし、模試では数字しか知り得ません。ですから、それを図るのは担当講師の腕にかかりますが、いかんせん研修も希薄な学生講師ですので、それも厳しいのです。会社側としてもこの業務形態では多くの講師を採用する必要がありますから、そのような研修をすることはできません。
私が勤務していた2年間で、何人の講師が来て、何人が辞めたかわからないほどです。
〇集団指導塾
集団指導塾と一言で言っても、その規模は様々です。弊社は比較的教室規模の大きい集団指導塾と言えるでしょう。私が学生時代にアルバイトをした塾もほぼ同様の教室規模でした。
集団ですから、目立ちやすい子とそうでない子がおり、どうしても目立つ子に目が行きがちになることが集団指導塾の弱点と言えるでしょう。指導にムラが出てしまうのです。(クセジュではそれを回避するために、少人数のクラス担任制を敷いています)また、学力レベルでクラス分けできていない(もしくはクラスが少ない)と、自分に適正なレベルで学習することができません。基本的に3科や5科の平均値でクラス分けがされますから、「英語は簡単だけど数学は難しい」などの現象も起こってしまいます。こういった状況を懸念される方も多いでしょう。
また、このような形態の塾に対して、個別でないわりに価格が高いと感じるケースもあると思います。個別ですと人件費がかさむので高いのはうなずけるでしょうが、「集団なのになんで」と思う方も多いのではないでしょうか。
それに対して集団指導塾のメリットはなんでしょうか。それは、個別指導塾について書いたことの逆です。
すなわち、集団に属することによって自分の立ち位置がわかるということです。
特に入試は、他者があってのものですから、自身の位置づけを知ることはとても重要です。それは数値だけでなく、「同じ高校を受験する〇くんは先生の質問に答えられたのに、僕はできなかった。」のような体験を通したな感覚も重要なのです。ライバルがそばにいることによって、目標までの距離が体感的に測りやすくなります。
もう1つのポイントは講師の質です。(これは同業として他塾も同様であると信じたいのですが、)集団指導塾では教壇に立つまで研修が多くありますし、担当してからも定期的に研修があります。私がアルバイトの時は、授業終了の22時から25時まで模擬授業をしたこともありました(今のご時世でははさすがにないでしょうが笑)。また、研修では板書の例や説明の例が資料として提供されました。実は集団指導塾はこのようなところにコストがかかっているのです。それは当然で、もしアルバイト講師の授業の質が低かったとしたら、個別指導であればせいぜい5人程度に噂が広まって終わるのに対し、集団指導であれば30人に広まり、企業の信頼がガタ落ちになります。
ですから、いい方は悪いですが競争に生き残るには、商品(講師、授業、教材)の品質管理を入念にせざるを得ないのです。
つまり、集団指導塾は精鋭であり(私が勤務していた塾では、入社時の選考で集団指導と個別指導を振り分けていました)、研修において入試情報や入試問題についても知識を学び高い実績を売りにしようと努力します。そして、高校入試の結果というのは集団指導塾の最大のアピールポイントであり、どの企業もそれを強調しています。
いろいろと述べてきましたが、やはり集団指導塾が一番のびるというのが、様々な形態で勤務した私の見解です。ただ、ある程度の学力がないとついていきにくいことも事実です。お子様の状況をよく見極め、苦しくてもついていけるなら集団指導塾が良いでしょう。