千葉県に住んでいても、埼玉県公立高校や茨城県公立高校を受験できることは知っていますか?
実は、千葉県の第2学区・第3学区のように、埼玉県と隣接している学区は、埼玉県の旧8学区(現在の埼玉県では学区制を廃止)を受験できます!
でも千葉県からわざわざ電車に乗って、埼玉県の公立高校に通う意味はあるのでしょうか?
今回は埼玉県の某大手塾で勤務していた私が、埼玉県の公立高校を受験するメリットとその特徴を見ていきたいと思います。
メリット① 中3からでも、間に合う
千葉県の公立高校は、入試による選抜を
500点のテスト+中学3年間の内申点135点=635点満点
の合計で行います(県立千葉高校や県立船橋高校など一部の高校を除き)。
この135点の内申点は、中学1年から中学3年の3年間において、それぞれ5段階×9教科の45点を3年間分合計したものとなります。すなわち、中学1年から中学3年を均等に扱うことになります。
ところが、埼玉県の県立高校入試は内申点の算出方法が違うのです。
例えば、春日部高校の入試では内申点を
中学1年:中学2年:中学3年=1(45点):2(90点):4(180点)
の比率で扱います(計315点)。
明らかに、中3の点数配分が高いですよね?
これを見ると、中1・中2でちょっとサボっていた人でも、中3で覚醒して頑張ればなんとかなるんじゃない?と思えてきますよね。
春日部高校はこれだけではありません。
特別活動点を100点満点、その他の項目の得点を85点満点で算出しさらに加点します。
「特別活動」とは生徒会や部活動などを指します。つまり、中3まで思いっきり部活を頑張って大会で賞をもらったりすることが入試にもプラスになるわけです。
「その他の項目」は各種検定などを指します。英検や数検などで、準2級や2級以上を取得することにより加点がもらえます。
春日部高校の入試では、ここまでに挙げた計500点の内申点を、334点(1次選抜)もしくは215点(2次選抜)に圧縮し、500点満点のテストとの合算で選抜を行います。ですから「中1・中2では結構サボったからなぁ…。」という人も、中学3年で生まれ変わったかのように努力をすれば合格が勝ち取れるのです。
ちょっと例を挙げて説明してみましょう。
◎コツコツ型の生徒
| 中1 | 中2 | 中3 | 比率を考慮 | 内申を圧縮 | 合計 |
東葛飾 | 41 | 42 | 43 |
|
| 126 |
春日部 | 41 | 42 | 43 | 297 | 128 | 128 |
◎挽回型の生徒
| 中1 | 中2 | 中3 | 比率を考慮 | 内申を圧縮 | 合計 |
東葛飾 | 28 | 35 | 42 |
|
| 105 |
春日部 | 28 | 35 | 42 | 266 | 114 | 114 |
上記表は2タイプの生徒が、東葛飾高校と春日部高校を受験した際の内申点の得点です。
数字の話になるので、ちょっと細かくなりますが…
千葉県の公立高校では、内申点がそのまま得点になりますから、コツコツ型の生徒は126点、挽回型の生徒は105点になります。その差は21点。千葉県の入試635点満点中では、約3.3%の差になってしまいます。
それに対して、春日部高校を受験する場合はどうでしょう。
埼玉県の公立高校入試では、内申点の学年比率は学校によって決定し、それを215点に圧縮します(2次選抜の場合)。このパターンでその差を検証してみましょう。
春日部高校の「合計」の欄の数値は圧縮した数値です。コツコツ型の生徒は128点、挽回型の生徒は114点になります。その差は14点です。これは715点満点(学力検査500点+調査書215点)に対して約1.9%となります。
さらに、挽回型の生徒が、部活動で県大会出場などの実績があった場合、それも数値として加算されます。最大で100点まで加算されるので、これを50点として算出してみましょう。50点は圧縮すると21.5点なりますから、簡単にその差を埋めることができるわけです。
東葛飾高校は部活動については「評価の対象とする」とのみ選抜方法として記載され、得点化は記載されていません。
このことから、埼玉県の公立高校が
「中3まで部活動を頑張った人を評価しますよ~!」
という姿勢で受験生を見ていることが理解できますね。
メリット② 男子校・女子校という世界を県立高校で味わえる
埼玉県の伝統校には男子校・女子校が多くあります。
男子校では、トップの浦和高校や学区トップの川越高校、熊谷高校、春日部高校、松山高校、女子校では浦和第一女子や川越女子などです。
千葉県の男女別学校は、公立では千葉女子高校のみです。
ちなみに、千葉県3学区(柏市・流山市・我孫子市・鎌ヶ谷市・野田市)から受験可能な埼玉旧8学区には、男子校の春日部高校と女子校の春日部女子高校があります。
両校とも伝統校であり、行事などでは男女別学校特有の一体感を味わうことができます。また、「ついつい女子(男子)の目が、いつも気になってしまう…。」という人にとっては、勉強に集中しやすい環境とも言えるでしょう。これは、私立名門校に男子校・女子校が多いことからもわかると思います。
メリット③ 学力の幅が広く、合格しやすい
春日部高校と春日部女子高校に限定した話になりますが…合格しやすいと言えます!
というのも、春日部高校の定員は男子360名。それに対して、東葛飾高校は定員240名。半数が男子として考えれば、男子定員120名となります。
この数字を見ただけでも合格者数は3倍!「お、受かりやすいかも。」という気持ちになりませんか?
もちろん、入試に合格しやすいとはいえ、春日部高校は名門校です。東京大学や一橋大学、東京工業大学などに毎年合格者を出しており、上位者の学力は東葛飾高校にも匹敵するもしくはそれ以上と言えます。また、指定校推薦の枠も多くあり、そのような目的での進学も狙いやすいでしょう。
魅力のある埼玉県の公立高校は?
千葉県からでも通う価値がある!と私が断言する埼玉県公立高校を挙げていきます。
①越谷南高校
外国語科を設けている高校。越ケ谷レイクタウン駅が開業したことにより飛躍的にアクセスが向上しました。それにともなって人気も高まり、進学実績も向上しています。この学校は内申点の比率が非常に高い学校で、学力検査との比率が6:4程度。コツコツ学習をしてきたけれども、試験では力を発揮するのは苦手という生徒は受験がしやすいと言えます。
②越谷北高校
埼玉県の旧8学区で見ると、女子にとってのトップ校。例年、国立大学や早慶・MARCHへの進学者も出しています。また慶応大学・早稲田大学への指定校推薦枠を持っていることも魅力。部活動等の実績は少ないが、公立高校で学習環境を求めるならばこの学校が良いでしょう。
③春日部高校
120年以上の伝統を持つ男子校。旧8学区のトップ校で、SSH指定校でもあります。東大、一橋大、東工大などへの合格者を複数出しています。また、部活動にも力を入れており、運動部で全国大会出場を果たす生徒もいます。男子校ならではの行事の盛り上がりは独特であり、貴重な体験になります。
埼玉県の高校を受験する際に気を付けたいこと
①学校選択問題の存在
埼玉県の公立高校には、数学と英語で学校選択問題があります。上位校においては、簡単な入試問題だと受験者の得点が拮抗してしまいがちです。
そこで県が、数学・英語において難易度の異なる2種類の入試問題を用意。各高校が入試問題を自由に選択できるというシステムです。当然、上位校では難度の高いものが選択されます。
…どれだけ難しいんだろう、と心配する人もいるかもしれませんね(汗)
数学については、都立高校の進学重点校や私立高校の過去入試問題で練習しておけば対応できます。なお、答えに対する根拠を説明することを求められるケースが多いので、それを意識した学習も必要でしょう。
英語では50語程度の英作文が出題されます。
これは千葉県よりも長い作文です。またテーマも「AI」や「情報リテラシー」について意見を求められるなど、難度は高いです。また試験時間も非常に短いので、英語の長文速読力も鍛えておく必要があります。
これらの状況を踏まえると、残った国語・理科・社会での得点が重要になります。この3教科で確実に点数をかせいでおくことが合格のカギと言えるでしょう。
②入試は7月から始まる
これは私立高校の話になります。
埼玉県内の私立高校は入学試験における優遇や確約(明言はしませんが)において、北辰テストという業者テストを利用するケースがほとんどです。
多くの場合、7月~12月の北辰テストでその判定を出します。併願校に埼玉県の私立高校を考える場合、北辰テストを受験したほうが良いでしょう。
この北辰テストは千葉県のS模試・V模試と異なり、埼玉県内の受験生ほぼ全員が受験します。ですから、これを受験することで早い段階からあなた自身の「位置」を知ることができます。
③千葉県の公立高校との併願は不可
当然ですが、千葉県・埼玉県両県の公立高校を受験することはできません。千葉県の公立高校前期入試を受験してしまうと、埼玉県の公立高校は受験できなくなります。気をつけましょう。
どうでしたか?
入りやすさだけで高校を決めるわけにはいきませんが、あなたにとって有利に受験を進められることも重要なポイントと言えるでしょう。
志望校選択の際には、埼玉県の公立高校も視野に入れてみてはいかがでしょうか。