成績が上がる授業の受け方 第二弾~メタ認知力活性化の鍵は身近なところにある~

メタ認知力とはだれもが持っている本能的な力 

前回「成績が上がる授業の受け方」と題して私の経験則に沿ったお話をさせていただいた。その中で出たキーワードとして“メタ認知力”が挙げられる。自分を一段高い視点から見ることによって

 

 〇今自分は何をしているのか

 〇行動の目的は何なのか

 〇自分が知っていることは何か

 〇自分が知らないことは何か

 〇忘れてしまっていることは何か

 

などを考えながら授業を受ける、宿題をする力。これをメタ認知力と定義する。この力は人間誰もが持っている。生きていくために何が必要か、それを手に入れるためにどうすればよいのか、今この瞬間足りているもの、足りていないものは何なのかを考える。その目的は生きるためであるということから“本能的な力”といえるが、もう少し簡単な言い方をすると“誰もが持っている力”である。

 しかしながら、学校で先生が手取り足取り指示をしてくれる、親や先生が常にうるさく言う、効率的に学習するために塾に通うといった受動的な環境の中に長い間身を置くことによってこのメタ認知力は埋没してしまうのである。ではこのメタ認知力を活性化させるためにはどうすればよいのか。その答えは二回にわたって記事を書いてきたテーマそのものにある。すなわち授業の受け方である。残念ながら教える側がメタ認知力を活性化させることに意識を置いているという例は限りなく少ないので、今回は自らメタ認知力を活性化させるための授業の受け方を得意教科編、苦手教科編に分けて述べる。

 

苦手教科はこうやって授業を受けろ

苦手教科の授業を受けているときのモードは“完全にメタ認知埋没モード”になっている。その証拠に授業の大部分は意味も分からずにただノートだけとっているという状況に陥っているはずだ。“家に帰ってから理解すればいいや”という気持ちでやみくもにノートだけとっている。結果すぐにカバーリングできずにテスト前に慌ててワークや問題集に手を出し、中途半端な状態でテストを受ける羽目になってしまう。

実は苦手教科の授業こそメタ認知力を活性化させるチャンスは十分にあるのだ。具体的に言うとまずはノートを見開きにして下三分の一くらいのところに線を引く。三分の二スペースのところは左側に板書、右側は空白にする。そして三分の一スペースのところに

 

〇まずは左上に日付を書く

〇授業中初めて知った言葉(例えば英語の授業では単語や熟語)を、板書をとりながら並行して三分の一スペースのところに羅列しておく。この作業を行うことで授業中眠くなることは絶対にない。

〇できれば授業中、それが無理ならば家で三分の一スペースのところに書いた「初めて知ったこと」「知らなかったこと」をできる限り調べる。

 

ということをやっていく。日付が書いてあるのである程度月日が経過して三分の一スペースのところを見返してみると「三か月前はこんなことも知らなかったんだ」という気持ちになれるはず。それが積み重なっていくと自分の成長が実感でき、だんだんと自信が得られるようになる。

 最後に空白にしておいた三分の二スペースの右側に板書したことをできるだけ自分の言葉を用いながらまとめなおす。

 このような作業を通してメタ認知力が活性化され、さらに覚えるべきことを覚える(一極集中&頻繁に触れる作戦)中で苦手だった教科が少しずつ分かるようになる。

 苦手教科がすぐにできるようになる“魔法のやり方”と即物的にとらえるのではなく、まずはメタ認知力を活性化させるための手法として始めてみる程度でよい。

 

得意教科、好きな教科は授業の中で勝負せよ

 一方で得意教科や好きな教科は苦手教科の授業中と比べるとメタ認知力は自然に刺激されている。そこで学習効率をさらに上げ、“聞く力”を高めるためには次のようなやり方を提案する。苦手教科同様にノートを見開きで使う。そして左側は板書用、右側は空白にしておく。板書をとりながら遭遇する

 

〇意味が分からないところ

〇初めて知ったこと

〇忘れてしまっていたこと

 

をそれぞれ三種類の色または三種類の記号、(例えば意味が分からないところは波線、初めて知ったことは丸で囲む、忘れてしまっていたことは四角で囲むなど)でビジュアル化する。並行して右側の空白スペースに同時進行で先生の板書を自分の言葉を使ってまとめるという作業をする。意味が分からない、初めて知った、忘れてしまっていたことが多すぎるとこの作業を進めるのは困難なのでビジュアル化の作業にとどめる。一方でそこまで多くなければ授業中にまとめる作業までやってしまう。その結果時間効率がかなり高まる。いずれにせよ得意教科のテスト直前の学習はかなり効率的かつ効果的に進めることができる。最終的に空白スペースに自分の言葉でまとめる作業までできるようになればメタ認知力はほぼ100%活性化され、同時に一生の財産になる「効果的な聞く力」が身につく。

 

メタ認知力を高めさせる親の子供に対する接し方

今まで教わる側の立場からメタ認知力活性化の手法を述べたが、教える側、教育する側からの手法、すなわち親や先生が子供のメタ認知力を活性化させるために簡単にできることを最後に紹介したい。子供は慣れてくると何も考えずに行動する。言われたことをただオウム返しに実行する。親の言うこと、先生の言うことは特にこのような状態に陥りやすくさせる。まずはここを自覚するべきである。子供が何かをやろうとするときに

 

〇今やっていることの目的は何か

〇そこに至るまでに何が足りないか

〇逆に何が足りているのか

〇足りない部分をどうやって手に入れるのか

 

という確認を子供自身ができるような問いかけが必要である。ただしこのようなやり取りを勉強面に限定してしまうと子供の持つ勉強に対する先入観が邪魔してうまくいかないことが多い。ソクラテスのようなよほどうまい問答をしなければ子供にとってこのやり取り自体も表面的なもので終わってしまう。

そこで1つ提案したいのは勉強以外に視点を向けてメタ認知を活性化させる方法である。一番良い例は買い物である。例えばカレーライスを今晩作りたい。そこで子供に買い物を頼む。その際に親が先に買ってくるものを指定するのではなく、

 

〇カレーライスを作るときに必要なものを列挙させる。

〇その中で足りないものは親が付け加える(カレーライスに何を入れるかがわからないのは単なる知識の問題なので)

〇冷蔵庫をチェックさせ今足りているもの、足りないものを調べさせる。

〇最終的に何を買って来ればよいのかを考えさせ、どのくらいの金額になりそうかを議論した上でお金を渡して買い物を実行させる。

 

このようなやり取りは小学生の場合はうまくいくが、中学生になるとお互いに照れがみられたり、反抗期という問題によってうまくいかなくなる。このような親子のやり取りをゲーム感覚でできるような場を勉強以外で作ってみるために親自身もメタ認知力を活性化させてコンテンツを考えてみることを勧める。