アルキメデスの考えたこと

アルキメデスの考えたこと

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冬期講習から続く中学準備講座もいよいよ最終月の2月。理系の講座はクセジュならではの「起源をたどる授業」です。これから中学校で学ぶ数学・理科の内容に、興味と期待感を持ってもらう狙いがあります。そこで2月は数学・理科に共通した方法で学習内容の起源を学ぶことにしました。数学ではピタゴラス、理科ではアルキメデス、つまり古代の偉人にスポットを当て、彼らが考えたことをたどっていくのです。

さて、今回は我孫子教室で理科の授業を担当している私が、初回の授業をレポートします。

 

アルキメデスのここがスゴイ!

アルキメデスといえば、紀元前のギリシャ人です。「アルキメデスの原理」など、その名のついた言葉を聞いたことがある人も多くいることでしょう。しかし具体的に何がすごいの? ということを知っている生徒はあまりいないようでした。そこで、彼の発見・発明の中でも私が個人的にリスペクトしている「円周率の話」へ。

池 村:アルキメデスは、当時としては考えらえないぐらい高度な方法で円周率を計算で求めたんだ。ちなみに〇〇君、円周率の定義は何だっけ?

生 徒:えーと…直径の長さに対する円周の割合です!

さすが、1月の授業「割合徹底攻略」で学んだことがしっかりと定着しています。

池 村:素晴らしい! 正確に言えたね。ところで円周率の大きさが3から4の間にあることを説明できるかい? ひもで測ったりせずにね。

生 徒:それは難しい…。

そこで、小学生の知識で十分に理解できる方法を用いて以下のように説明しました。

①円の外側にぴったりはまる(外接する)正方形を描く。
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②円の内側にぴったりはまる(内接する)正六角形を描く。

③正六角形に対角線を引くと6つの正三角形ができる。
④図形の周の長さを比べると、
正六角形の周 < 円周 <正方形の周
円の半径×6 < 円の直径×円周率 < 円の半径×8
円の直径×3 < 円の直径×円周率 < 円の直径×4
以上により、 3 < 円周率 <4

生 徒:おお、すごい!

池 村:このように知りたい値を2つの数ではさんで範囲を絞り込む方法を、「はさみうちの原理」と呼ぶんだ。アルキメデスはこの方法でもっと細かく円周率を絞り込んだのだけれど、何角形でやったと思う?

生徒たちは正十角形など色々と予想してくれましたが、どれもハズレ。なんとアルキメデスは「円に内接・外接する2つの正九十六角形」を用いたのです。これにより円周率を小数第六位ほどまでの2つの数ではさみ、最終的に皆さんが知っている小数第二位までの円周率、つまり3.14まで正確に知ることができたのです。

生 徒:でも正九十六角形なんて描くことも難しいし、計算で求めるなんてどうやったんですか?

池 村:彼は正多角形の辺の数が2倍になると周の長さはどうなるか、その関係を調べたんだ。これは高校数学で学ぶ数列の考え方なんだよ。彼は正六角形から出発して正十二角形、正二十四角形、正四十八角形、そして正九十六角形まで計算したというわけ。そういえば、かつて東京大学の入試で「円周率が3.05より大きいことを証明しなさい」という問題が出たことがあったなぁ。

生 徒:え、そうなですか? まさか同じように数列使ってはさみうち使って何十角形かの周の長さを出さなきゃいけないとか…。

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池 村:いや、正八角形1つ使えば簡単にできる問題だったよ。

生 徒:アルキメデスの方が圧倒的にスゴイ…!

 

次回の授業に必要な密度の知識

もちろん、アルキメデスのすごさは円周率の件だけではありません。モノが浮くことを説明した「アルキメデスの原理」、小学校の理科でお馴染みの「てこの原理」、それから数々の発明などがあります。しかし多くを話している時間はありませんので、エピソードは彼の死とお墓の話で終わりとしました。

戦争で敵方の兵士に殺されたアルキメデスの最期の言葉は「私の図形を壊さないでくれ」だったそうです。実は敵方の将軍からアルキメデスは殺さぬよう指令が出ていました。敵からも彼は尊敬されていたのですね。ですから命令違反をした兵士は処刑されましたし、その上将軍のはからいによってアルキメデスの墓がつくられました。その墓には彼が発見した円柱と球の性質について記されていました。

さて、次回の授業で「アルキメデスの原理」について触れていきます。これにまつわる「王冠のエピソード」は有名です。ただし、この話を理解するためには、基礎として「物体の密度」にいついてしっかり理解し、計算できるようになっておく必要があります。授業の最後にテキストに記載されている色々な物質(水・サラダ油・鉄・金・銀・銅など)の密度の値について書き込みながら補足事項などを交え話していきました。「金」のところでは私自身の‘すべらない話’である祖母との想い出話(我孫子教室HPの我孫子通信1月号アイズアイズ参照)を語りました。そしてここでちょうどよい時間となりましたので、宿題を出して授業終了としました。

ひとまず第1回は次につながる形で無事に終えることができ、生徒の表情も満足といった感じに見えてホッとしました。さて、次の数学の授業でどんな面白い話が聞けるのか楽しみですね。

我孫子教室 池村 卓人

 

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